女の隙間、男の作為
「早速今週の金曜は松岡くんの歓迎会だからね。カノも参加するように」

「え?部単位の歓迎会なの?」

「うちのグループだけでやってもお通夜になるのがオチでしょ。
あんたがいないと部長達が寂しがる。ラストまでつきあってあげなさい」

「あたし、しゃぶしゃぶが食べたいなー」

「あんたの脳内は食事と酒しかないわけ」

「ノンノン。利益と売上も入ってる。少なくとも9時6時の間は」

「嘘を吐くな。10時10時の間違いでしょ。万年フレックス&残業の岡野さん」

「まぁそうだね。10時10時は利益と売上。夜10時以降が食事とお酒。これでいい?」

「…いつかあんたの口から“今夜はデートなので定時で帰ります”と聞ける日がくると信じてるわ」

なにその信仰心。
邪魔なだけじゃね?と思ったけれど口に出すことなくランチタイムの終わりを告げる地味な鐘の音が聞こえた。

結城にしゃぶしゃぶの店をリクエストしようと決めながらフロアに戻る。
化粧直しすらしなくなったのはいつからだっけ?と計算しようとしたけれど上手くできなかった。
利益の計算なら速いのになぁと自分に呆れつつ午後イチの電話を取る。
たまには若い子より俊敏に反応しなくては。

「… いつもお世話になっております。…申し訳ありませんが結城は外出しておりまして18時頃の帰社予定でございます。
 えぇはい、その件でしたら、わたくし岡野と申しますが、結城の業務のアシスタントをしておりますのでお調べして…はい、承知いたしました…ご連絡先を…」



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