シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「その布1枚で、お前を見逃してやる。

だから――」



俺は――

首を左右に振った。



時間に反応した久涅。

何かが起るのだろう。


俺は、命と引き替えに…心は渡さない。

芹霞の心は奪わせない。


「そこまで…

拒むか、俺を」



久涅の声は抑揚がなかった。

まるで屈辱を感じているかのように、その唇がわなわなと震えている。


「こんなに頼んでも、

俺と同じ顔をした奴でさえ、

俺を拒むのかッッ!!!」


恫喝というよりは悲痛な叫び。


まるで共鳴のように心が痛んだけれど。


芹霞は渡さないという意思を込めて――精一杯の拒絶の証として、俺は頷いた。


冷たい空気が肌に纏わり付いた。


触覚で感じる久涅の感情。


悲哀。

絶望。

憤怒。

煩悶。


そのどの感情にも――

俺は心動かされなかった。


同情で芹霞を差し出すくらいなら、俺はとうに…煌や玲に芹霞を渡している。


だけど、出来ないんだ。


12年間の想いは大きすぎて熱すぎて、もう俺の隅々まで行き渡って。

どんなにしても諦められるものではなく、なんとしてでも手に入れたいもので。


――紫堂櫂を愛してる!!!


俺は――

芹霞を手に入れる為に全てを変えた。


芹霞から俺に向けられた心は、何一つとして…俺以外の奴にくれてやるわけにはいかない。


そんな半端な心で芹霞を想っているわけではないんだ!!!


例えその想いの為に――



「では――

"その刻"を待たず、

今すぐ死ね」



自らを窮地に陥れても。


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