シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「せりがこれ以上馬鹿になったら、たまったもんじゃない」
「ええ、でも久遠が寒く…」
「いいって言ってるだろ!!? 大嫌いな君にそこまでしてやってんだから、ありがたく着ろよ、せり!!!」
着て貰いたいわけだ。
自分の匂いがついたものを。
マーキング。
動物か、お前。
言ってることとやっていることが反対だ、お前は!!!
それに――
「……何で2人してオレを見てるんだよ」
俺は溜息をついた。
「久遠、どうしたの…中のその格好!!! 何でスーツ!!? 首のスカーフ!! 何そのモデルさんみたいな格好!!! ねえ、何でいつもあのやる気ないだらだらの格好じゃないの!!? ねえ、どうしちゃったの!!? 熱でもあるの!!?」
「俺がこんな服着たら駄目なのかよ」
俺から言わせれば、成金ホストだ、ホスト!!!
「駄目っていうか、久遠格好いいね!!!」
芹霞が感嘆の声を上げて。
イラッ…。
「元がいいものね、何でも映えていいね」
久遠の思惑通りなのが、余計イラッ…。
「せり。ティアラ姫とクラウン王子と凜とそのふさふさとオレだったら、どれが一番格好いい?」
勝ち誇った顔で、また選択を突きつける。
選ばれる自信があるとでも言うように。
こいつは、己の見栄の満足の為というよりは、俺の残念がる顔を見たいらしい。
立場は久遠が上だと、見せつけたいらしい。
悪意がひしひしと伝わってくるんだ。
視線が俺の布に注がれて。
布に対抗しているのか!!?
「…結構…悩む選択だね」
芹霞は唸るように言った。
「クラウン王子と同列かよ、オレ…」
落ち込め。
俺だって8年間、そうやってきたんだ。