シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


俺は、タイルを拳で叩き付ける。


応えたかったんだよ、本当は。

抱きしめたかったんだよ、本当に。


俺の命なんかより、

芹霞の想いを優先すればよかった。


逢えなくなる恐怖より、

一時でも幸福を味わえばよかった。



だけど。


あああああ!!!



何度も何度も――

俺は拳を、タイルに打ち付ける。


拳から流れる血が…まるで俺の心のようで。


苦しい。

苦しい。


再会出来たのに。

芹霞が居るのに。

芹霞が笑顔を見せるのに。


俺は生きていられたのに!!!


俺の記憶がないなんて。


俺が芹霞を愛してきた記憶が…ないなんて!!!

何なんだよ、この結末は!!!


手首につけた布に何度もキスをする。


温もりのないただの布。

濡れて冷えた芹霞の心。


何度も芹霞の柔らかな熱い唇思い出して口付ける。


ずるずると…タイルから崩れ落ちる俺の身体。


どんなに男の身体をしていても、芹霞に意識して貰えなければ意味がない…そんな身体。


俺は…

ふり注ぐシャワーの飛沫を浴びながら、

頭を抱えて祈り続ける。



どうか…どうか。


芹霞が俺を思い出しますように。



――芹霞ちゃあああん!!!



どうか、どうか…。


芹霞が俺から…離れていきませんように。



――可愛いね、僕の従弟は。




「……れ…い…」



俺の目から…涙が零れ落ちた。


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