シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
押し黙る久涅。
場に拡がる不気味な静寂。
そして――
「!!!!?」
動くのは一瞬。
私の頬に突風を感じた時には――
ビシィッ。
拳と拳がまじわう、重い音がした。
周涅が仕掛け、緋狭様が受けた交戦図。
その凄まじさは衝撃波となって周囲に跳ね返り、弾け飛んだ地面の瓦礫が、真上に舞い上がっている。
ビシィッ。
重い音と共に、今度は周涅反対の拳と緋狭様の足が交わった。
その過程を目で追いかけることは出来ない。
確認出来るのは、周涅の攻撃と緋狭様の防御がぶつかって、互いの力を相殺しあった…瞬間の静止図。
「すげえ…。緋狭姉相手に引かない周涅もすごいけど…緋狭姉だってあの周涅を凌いでる。五皇レベルって…すげえ…」
緋色の襦袢の裾は、緋色の蝶の羽のようにひらひらと。
妖艶な白い体躯を惜しげ無く私達に晒しているのに…卑猥に見えないのは、彼女の持つ精神性の高さが原因だろう。
外見がどうであれ、体がどうであれ…彼女の高邁な精神は輝く。
それは、じっと見守る朱貴にも繋がるものがある。
朱貴も…どんな淫猥な宴にも、心まで染まることはなかった。
緋狭様も朱貴も…
汚れを撥ね付ける、赤い光がある。
未だ謎が多き朱貴。
強き力を持ち、炎の力もあり、そして金翅鳥(ガルーダ)をも操れる。
その彼が自らの体を、下卑た欲に捧げたその事実は、やはり私にとっては夢を見ていたような気分なのだけれど。
朱貴は、目を瞑って天井を振り仰ぎ…回復結界を張り始めた。
全ての力を回復に回している。
目の前では周涅と緋狭様の交戦。
警戒心高い朱貴が、2人に無防備な姿をさらけ出しているのは…不思議だった。
それだけ切羽詰まっている状況だったからか。
それとも…
緋狭様を信じ切っているからなのだろうか。
味方として、緋狭様が必ず勝つと。
もしそうなのであれば…
そこまでの信頼感は何によって生まれているのだろうか。