シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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そして3つの扉を抜けて行き着く機械室。


大画面には、流れる英数字。

響き渡る軽快なキーボードの音。


「クマ」


久遠がそう呼ぶと、キーボードの音が止った。



「顔を見せろ。

本物かどうか…検分してやる」



久遠の顔は真剣で。



「本物のフリをして偽者だったら…

此の場で切り捨てる。


"約束の地(カナン)"に仇なすものを持ち込み、電気系統をおかしくさせたその報いをとって貰おう」


久遠の手には、いつの間にか大きな鎌。



「嬢ちゃん…」


ゆらゆらと揺れる男は――


「嬢ちゃんと再会を喜ぶ場面に、何で俺、疑われてるんだ? 何で突然窮地?」



大柄な…美男(イケメン)で。


渋い顔をした…"野生"的な処と声は同じだけど。


「嬢ちゃんなら判るよな、俺のこと…判るよな?」


恐怖に引き攣ったような声をしたその男は、



「俺は、三沢玲央だ!!」



見る処全てが、すべすべとしたお肌に覆われていた。


何処をどう見ても、あの特徴的なわさわさな毛など何も無い…少し翳りを持つ顔をした、30代くらいの美男で。


初めて見る男だった。



そんな男が…

どうして"クマ男"の名を口にして、機械室の機械を操作しているのか。


あたしだけが、見知らぬ男に見えているのだろうか。

他の皆は、皆"クマ男"に見えているのだろうか。


判らない。


真実の鏡は…ああ。


下の応接の間に置いてあるバックに入れたまま。


真偽は…自分の目に。


あたしは――


どう目を凝らしても、"クマ男"に見えないんだ。


だから――


「どうだ、せり」


あたしは首を横に振る。


「イケメン過ぎて別人としか思えない。

毛がないクマはクマじゃない。

このクマは、偽者だ!!!」


久遠が鎌を持って、一歩前に進み出る。



「待て待て待て!!!

嬢ちゃん、嬢ちゃん!!!」



その時――


「な!!!? このプログラム!!!」



由香ちゃんが大画面を見て、驚いた顔をしたまま動きを止めた。

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