シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

S.S.Aで玲くんが仕掛けてきた容赦ない連続技に、むずむずする鼻押さえて勘弁してくれと願っていた頃が懐かしい。

願わねば、玲くんが止まらないと思っていたのはあたしの完全な自惚れ。

簡単に…玲くんは離れていく。


思っていた以上の速度で、時間は流れていたんだ。


あたしに向けてたあの顔を、凛ちゃんに見せている。

あたしのことは忘れられている。


アタシヲオイテイカナイデ。


悲しいよ、寂しいよ。


スキダッテイッテクレタジャナイ。


だけどそれは玲くんに言ってはいけない。

優しい玲くんが傷つき、折角動き出した恋を諦めてしまう。


あたしは玲くんを"我慢"させたくないんだ。

玲くんの恋の邪魔は出来ない。


だけどせめては…

いつも通りに笑って貰いたい。


あんなに顔を強張らせて、罪悪感に満ちた表情をしないで欲しい。


判っていたのに。


玲くんは"永遠"じゃない…

それは判っていたことなのに。


すぐ結婚してしまうんだから。


玲くんの永遠は…

あたしのものじゃない。


――……は私を愛して、この地で私と永遠を過ごすの。


突然頭に蘇る…女の声。

判る。


これは…久遠の…



久遠の…?

ええと、誰だっけ?


あれ?


"約束の地(カナン)"で何があったっけ?


あったのは判るんだけれど、何があったのかが判らない。


腕を組んで首を傾げて凄く考えたんだけれど、記憶が蘇らない。


その時、こちらに向けられていた紅紫色の瞳に気づいて。

いつの間にか、先を歩いていた久遠が戻って来たらしい。



「ねえ、久遠。あたし…」

「せりはボケじゃなくて致命的な馬鹿。何度言わせるんだ」


……。



「洗えと言ったのに、まだ頭腐らせたままなのかよ。もういい加減、現実に還ってこい!!!」

そう言うと、有無を言わせない強い力であたしの手を掴み、引き摺るようにしてずんずんと機械室に連れて行った。


いいのかな、平気なのかな。

凜ちゃんと玲くんが1階でどうしているか…


「気になるわけないだろ!!!」



はあ…天の邪鬼だな、久遠は。


ふふふふふ。

ふふふふふ。


腐腐腐腐腐。





「…とまあ、久遠はこんな感じだ」

「久遠様…どこまでも報われず、お可哀相に…。いっそのこと、この隙に芹霞を…」



「オレはせりが嫌いだ!!!」


そうだものね、凜ちゃんが好きなんだものね。


あたしは判ってるよ?

可愛い、可愛い。



ふふふふふ。

ふふふふふ。

腐腐腐腐腐。

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