シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


逃げろ。


逃げろ。



これは夢。

これは悪夢。



捕まるな。

振り向くな。


夢の中で夢だと感知するのは、明晰夢というものなのだと…以前、夢に潜ることが出来るという不思議な友達、紫茉ちゃんに教えて貰ったことがある。


その明晰夢は…特殊なもので、夢の主体を故意的に維持出来るようになれば、"予知夢"というものに変化すると…これは何かの雑誌で見たことがあったっけ。


冗談じゃない。


こんな悪夢が現実に…

未来になってたまるものか!!!


あたしは必死で逃げ回る。


闇に絡み取られないよう、死に物狂いで。


漆黒色は嫌いだ。


闇なんて嫌いだ。



あたしの本能が、嫌悪する。



――ドウシテキライナノ?



来るな!!!

あっちへ行け!!!



あたしの本能が、拒絶する。



――ドウシテコバムノ?



逃げろ。


逃げろ。



――キテ…。



闇に触れさせるな。


あたしを壊させるな。



――アタシニフレテ。



あたしは闇など必要ない。



――カエッテキテ。



闇よ、去れ!!!


あたしの元から、去れ!!!



――ネガワクバ…




「――…か?」




去れ、永遠に――!!!





「……霞?」





――ズットアイシテ…。




「芹霞、大丈夫か!!?」




全身汗びっしょりになりながら、


泣き叫ぶようにして飛び起きると――



「芹霞!? 僕が判る!!!?」



鳶色の瞳が、上から心配そうに見下ろしていて。

< 14 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop