シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

カラーン。


「小娘。逆の可能性は考えないのか? 玲に選ばれる…もしくは、玲をフる選択肢は?」


すると芹霞が、泣きそうな顔で笑った。


「玲くんが凜ちゃんよりあたしを選ぶって? ありえないね、そんな――夢みたいな話」



どくん。


僕の心は跳ね上がった。



夢みたい…って、

どういう意味?



「あたしは――

最初からフラれるつもりだったし」



俯いた芹霞と、櫂の視線を感じて…

僕の胸が締め付けられる。



苦しい。

心が苦しい。


アリエナイッテナニ?

サイショカラッテナニ?


何処までも僕の愛は分かって貰えていなくて。

何処までも僕の頑張りは空回り過ぎて。


僕だから…なのか。

僕は…何をしてもどうしても、櫂と同じ舞台には立つことは出来ないのか。


"負け戦"


ああ…本当に僕、滑稽だよね…。


だけど――

僕が心に偽って、芹霞をフるということが耐えられない。

だけど…これ以上、櫂を裏切るように…堂々と告白なんて出来ない。



苦しい、苦しい、苦しい。



途端に乱れて痛む僕の心臓。



「玲…心臓に逃げるな」


冷ややかな当主の声。


"逃げる"


的を得ているかも知れない。


僕は唇を噛みしめて、息を整えた。



「玲。言葉にしにくいというのなら、出来るようにさせてやるぞ?」


そして久涅が取出したのは金の万年筆。


「愛の言葉を言えぬ腑抜けな従弟に、贈物だ。


鐘が終わるまでに、"お試し"の結果を親父殿に提示出来なければ…"約束の地(カナン)"は滅ぶぞ?」



どくん。



「卑怯だよ、久涅!!!」


「小娘。お前だって、焦れているだろう? 簡単じゃないか。"お試し"の成果がYESかNOか。2つに1つ。玲の言い方1つで、小娘の返答も変わる」


「変わらないよ、久涅。だって玲くんは凜ちゃんを…」



カラーン。




どくん。




「判るか、玲。今で…11つめの鐘の音。

あと1つだ。
あと1つが鳴り終わる間に、お前が動かねば…」



くるくると回る金の万年筆。




どくん。




櫂…。


櫂…。




僕は――。


僕は!!!!





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