シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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機械室であたしが最後に言おうとしたのは――


"どうかあたしをフッて下さい"


優しい玲くんはきっとすぐに言い出せないと思ったから、早く解放させてあげようと思っていた。


"お試し"のままという結論は決まっているのに、ずるずると仮恋人をしているのは…やはりあたしにとっても心労で。


何だか…玲くんが頻繁に発作を起しているのは、そうした心理的ストレスも原因があるのではないかと思ってしまって。


何かを始める為には、何かを切らないといけない。


凜ちゃんと始めようとしているのなら、やはりあたしと玲くんは綺麗に精算しなければならないと思ったんだ。


凜ちゃんは何処にいるか判らないけれど、いない時にきっちりと玲くんの身を綺麗にしていればいいだけの話だからと…切り上げて終了させようとしたあたしに、玲くんは刻限までと続行すると言い渡された。


結果は同じなのに…あたしに気を使って時間ぎりぎりまで仮恋人しようとしてくれているのは…嬉しいというよりも凄く哀しかった。


玲くんが異性として好きかも知れないと思い始めたから、余計に…同情で付き合われることが、苦しくて堪らなくなる。


嬲(なぶ)り殺し。

殺すなら一気に殺して欲しい…そんな心境で。


だからそれを振り切り笑顔でいる為に…あたしは踊りまくった。


愛しいクラウン王子の横で。


それを久遠に邪魔されて、連れられた時に…久涅と紫堂の当主が現われて、皆が見ている場にて、あたしを公開失恋をさせようとして。


惨めの上塗り。


フラれるならこっそりフラれたかったのに。

ああ…玲くんが好きかもと皆に言ってしまっていたあたしは、皆の前でその玲くんにフラれないといけない。


いい恥さらしだ。


何…夢見ちゃったんだろう。

何…自惚れちゃったんだろう。


あたしは魔法をかけられて、白い王子様に舞踏会に連れて行って貰った。

だけどあたしは主役のシンデレラではなく…王子様に選ばれなかった諸々の女の1人だったのに。


判っていたことだったのに。

夢…見過ぎちゃったんだ。



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