シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
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思い出すのは、横須賀港に居たあの日。


どうしてあの日――

あたしがあんな港にいたのか判らない。


何をしにあそこに赴いたのか、思い出せないんだ。


そこにはお姉ちゃんもいて、胡散臭い氷皇もいた。


最近仲良くなった小猿くんと、二重人格の桜華保健医…麓村朱貴もいて。


彼らは七瀬紫茉ちゃんの友達…というか仲間で、紫茉ちゃんには周涅というお兄さんがいるんだけれど…確か氷皇そっくりのやっぱり胡散臭い男だった。


小猿くんには雄黄という偉大なお兄さんが居るらしい。


小猿くんは今、皇城という…《妖魔》だとかいう化け物退治としながら、表向きにも高い地位がある…実家から家出していたはずで。


紫茉ちゃん抜きで、小猿くんと朱貴と…あたしは海にでも見に来たんだろうか。

その経緯が全然思い出せないんだ。


真実がどうであれ、あの日の状況は楽しいものではなく…


確かに変な化け物に遭遇したこともあるけれど。


そんコトより――

あたしの大事な仲間が悲惨だった。


桜ちゃんは――

全身酷い怪我でもう動くことすら出来ない状態だった為、病院というより…回復を目的とした紫堂財閥の研究施設に、集中治療の為に急遽搬送された。


そしてあたしの唯一の幼馴染である煌は――

…過去に自分が犯したことを気にして、あたし達の元から去り…殺戮集団制裁者(アリス)に還ってしまった。


制裁者(アリス)特有の真紅色の邪眼を見せつけて、桜ちゃんを攻撃して…発作で倒れた玲くんを見殺しにして…姿を消して以来、煌の姿を見ていない。


早く煌を見つけなきゃ。


あたしと煌の思い出は凄く濃厚で…そう簡単に消せやしないのに。



濃厚過ぎるものは、心に深く刻み込まれているから…煌だって、絶対あたしとの思い出を覚えているはず。


あたしが反対の立場だったら、絶対煌のことを忘れやしないもの。


あたしそんなに…薄情じゃないもの。


――ホントウニ?


あたし、自分の心くらい…自分でよく把握しているもの。


――ホントウニ?
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