シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
芹霞は、レジに並べられた値札を見て卒倒しかけた。
大した金額ではないけれど、僕には現金を持ち合わせていなかった。
口座さえ凍結されていなければ、もっともっとプレゼントしてあげられるのにね。
忌々しい青色の力を借りるのは癪だけれど、後で倍にしてでも…僕の服の分も合わせてきっちり返してやる。
ああ本当に。
どうして僕の好きなブランドが、氷皇デザインなんだよ。
それをどうして氷皇が知っているんだよ。
僕の…女性に対する好みまで筒抜けだと思えば腹立たしいけれど。
だけどこれは、芹霞への…僕からの記念プレゼントにしたいんだ。
可愛いよ、芹霞。
その可愛さは、僕だけのものだからね?
こんなに可愛い芹霞が、躊躇うことなく僕の隣に立って、"玲くん"って笑ってくれるだけでもたまらない。
本当に本当に嬉しくてたまらない。
余裕ぶってなんていられない。
周りに見せつけたい。
自慢したい。
僕なりに、1日の特権をいつどういう風に使おうか、ずっと考えていたんだ。
由香ちゃんにそれとなく調査して貰ったり、僕自身で調べたり。
頭の中でのシミュレーションは、何度も何種類もしていたはずだった。
確かに予定外の時期に衝動的に始めてしまった"お出かけ"だけれど、だけど即座に対応出来る程の案は、僕にはいつも心にあったんだ。
もっと大人に、もっとスマートにリードして。
――甘い甘い一時を。
僕は余裕の態度でお姫様を翻弄させる…はずだったんだ。
だけど駄目だね。
初っ端から湧き上がってしまった"嬉しい"という感情は、予定を狂わせた。
僕の感情よりも芹霞の感情を引き出そうとしていた僕は…予想外に大きくなる自らの感情に自滅しつつあった。