シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

シミュレーションなんて全然役に立たない。


芹霞ばかり気にしすぎていて、自分の想いの大きさを、育つ速度を…まるで計算にいれていなかったのが原因だろう。


更に、突如割り込んできた青色にも邪魔されて、当初のペースをがたがたに狂わされたけれど、その青色の車で…芹霞が少しだけ僕を意識してくれたことに気づいて、抱きしめたい衝動に駆られるのをずっと我慢していた。



ふと思った。


かつて、大切な赤い宝石箱を取りに神崎家に赴いた時の僕は、同じ車を運転していても1人きりで、何度も何度も、助手席に芹霞がいないことを嘆いていた。


今…苦労はしたけれど、芹霞が僕の特別席にいて…僕を意識してくれている。


僕が動く度、呼吸の感じがいつもと違うのが判ったから。

伊達に、いつも君を見ている訳じゃないよ。


芹霞の呼吸が乱れれば乱れるほど、僕の心も愛しさに乱される。


心がきゅうきゅう音をたてる。


あまりに嬉しすぎて、あの時のことが悪夢だった気さえしてきて。

僕まで変に緊張してしまって、運転処の話じゃなくなって。


その嫋やかな身体に、触れたくて触れたくて仕方が無かった。

触れることで、現実を確かめたかった。


出来れば、僕の膝の上に芹霞を乗せて、運転したかった程だ。

それを手だけに抑えたのは、僕の理性。


可愛い僕の芹霞。


どうかもっともっと、僕のことを"男"として意識して?

僕だけのことを思って?



――今までもそんなに照れ屋さんだったの?


雰囲気に酔いすぎていたのは僕の方。


芹霞の反応ばかり気にしていた僕は、自分の態度を客観的に見れていなくて。


芹霞の意外すぎる言葉に、思わず急ブレーキを踏んでしまった。


僕…照れるのか?


思い当たるフシはある。


僕…照れるんだ。


何だかそんな僕すらも愛おしく思う。


本当に芹霞を溺愛しているんだね、僕。

今までの"我慢"の仮面が、嘘のようだね。


僕…変われているんだね。


多分、意味が判っていないのは芹霞だけだ。


それが、悔しくなる。


芹霞の方が余裕じゃないか。

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