シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「すみませ~ん。結局その袋の中身って、何だったんですか?」
気づけば芹霞が、あのカップルにそう尋ねていて。
「見せて貰ってもいいですか~?」
僕は慌てて、その両目を手で覆った。
「玲くん、見えない。ねえ、見たい~」
「どうかお気になされず。
ははははは…」
空笑いしか出てこない。
ぐったりとした僕は、その後ベンチで項垂れてしまった。
隣では、ぷくうと頬を膨らませた芹霞がまだ言っている。
「玲くん、ねえ…あれ何?
凄く気になって仕方が無いんだけれど」
言えないものだから、こうして隠しているんだよ。
「あたし、海外旅行は興味ないけど、あの中身が興味あるの~!!!」
僕の腕を両手で揺らす芹霞。
海外なら喜んで連れて行って上げられるけど、あれは…出来れば興味を持って貰いたくないんだ。
いや…凄く興味があるのなら、買って…あげれなくもない…けれど。
でも僕だって"男"だし、出来ればあんなのじゃなく…。
だけどもし僕の前で芹霞が使ったら…。
―――――…。
………。
…何、考えてしまったんだろう。
僕は慌てて、ぶんぶんと頭を横に振る。
毒々しい卑猥な青色に汚染されてしまっているのか。
駄目。
とにかく駄目。
純真じゃない僕でごめんね、芹霞。
「玲くん、教えて?」
芹霞が可愛く僕に聞いてくる。
まるでその顔には邪気などないのに、小悪魔に思えて仕方が無い。
「どうしてあたしが使っちゃイケナイの?」
ああもう本当に――
「どうして使わせてくれないの?」
――あははははは~。
氷皇!!
頼むから、放っておいてくれよ!!!
僕のペースを壊さないでくれよ!!!
僕は…健全に、芹霞との愛を深めたいのに。
此処を早く去ろうかなと、本気で思った。
だけど同時に思う。
きっと、直ぐには帰してくれない。
氷皇が、僕の思考を読みぬいているというのなら。
あの手この手と、僕の動きを制する"何か"がある。
何で…氷皇が出張るんだよ。
これは、僕個人の問題なのに。