シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「解読率はまだ70%いってないか。師匠がいれば、こんな暗号解読のプログラムくらいささっと作っちゃうんだろうけど…ボクには圧縮されたデータを展開するプログラムでひいひいだよ。ボクはアニオタ出身で生粋のプログラマーじゃないしさあ、ああ師匠のプログラムが恋しいよ」
「その紫堂玲が…」
突如久遠が声を出し、1つの画面を指差した。
「なんであそこに、名前が挙がる?」
「へ? って…それは、黄幡会の寄付金のデータ…何で師匠の名前があるんだろうね。師匠…まさか隠れ信者だったとか?」
俺は静かに首を横に振り、目の前の青いパソコンに打込んだ。
『日付が最近だ。この日付と時間で考えられるのは1つ。更には当時の"不可解"なことを思い返せば…玲が車の修理代金を振り込んだものだろう』
「は? あの師匠がご立腹した請求書…ああ、確かに金額はそれくらいだったね。ああ、口座…オウバンカイってなってたもんね。何だ、師匠…黄幡会のサポーターになっちゃったのか。此の場に師匠が居たら、怒りまくっていただろうね」
同感だ。
「あれは何だ?」
久遠がまたもや、違うモニタを指差した。
「あそこにも紫堂玲の名前がある」
「え!!? あっちは…『TIARA』だとかいう謎のデータ。うう…こっちは展開した後の整備が必要だね。言語は英語なのかなあ。何だかやたらめったら、"EMP"って出てるけど…なんかの実験データかな。確かに"Rei Shidou"って出てくるね。途中から文章になっているみたいだね」
玲が…どうしたと言うんだ?
そんな時、大画面から鐘の音が鳴り響いて、全ての画面が…ゲーム仕様に切り替わる。
「やっぱり画面が沢山だと迫力あるね~。よし、"APEX"の予選の参戦許可が出た!!!おおい、司狼、旭ッッ!!! 台所から戻ってこいッッ!!! ゲームが始まるぞッッッ!!!」
遠坂は嬉々として、大画面の前に座る。
同時に…今まで姿を見せていなかった旭と司狼が、両手一杯に菓子の袋を抱え込んで部屋にやってきて、遠坂の両脇についた。
その顔は、興味津々というもので、目が異様な程にキラキラ輝いている。
完全に子供だ。
――見た目だけは。