シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「紫堂を此処までけちょんけちょんに言えるのは久遠くらいなものだねえ」
と苦笑した遠坂は――
「いやまあ…盲点に気付けないボクも馬鹿でした。ありがとうございます、久遠さま。ぺこ。……ってッッ!!! なあ、勝負の行方は!!?」
忙しい態度のままで、画面に目を向け、
『 ZERO WIN 』
表示された文字に、見開かれた目が途端に潤み始め、
『 軍神 renounced 10th APEX
(第10回APEX大会で、軍神は棄権した)
Champion is ZERO!!! 』
その場に崩れ落ちるようにして蹲(うずくま)り、
「いいんだ…。師匠が生きているなら、優勝なんて。この先の大会でボクの優勝が絶望的でも…今回だけしかチャンスがなかったとしても…いいんだ。師匠が無事なら。ボク…とってもいい弟子だし…。
いいんだ、棄権扱いになって…準優勝も貰えなくたって。
……ぐすっ」
悲哀の嗚咽が響き渡り、一同の…同情の眼差しが遠坂に送られる。
「ま、まあいいじゃないか、師弟仲良く不在なのも」
蓮が宥(なだ)めるように声を出せば。
「でも師匠は、ちゃっかり優勝してるんだよね。リアル…ゲームキャラで」
ぼそっ。
「ほ、ほら"全能神"を救ったんだから、お前の方が上だって」
司狼が上擦った声で励ました。
「ボクが上だって言うなら、その称号くれよ」
ぼそっ。
「し、称号がすべてじゃないし。
ひ、ひとまずさ~
紫堂玲は助かったんだし。
一件落着ッッッ!!!」
「きゃははははは!!
"いっけんらくちゃく"~
"いっけんらくちゃく"~」
そして旭は、久遠を見て首を傾げた。
「久遠さま。
れいくんは元に戻れたの?」
あ……。
俺達は、顔を見合した。
玲は――
閉じ込められたまま。
一件落着、ではない。
重大な問題をどうすべきか、俺は大きな溜息をついた。