シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「なあ――…
紫堂玲がゲーム内に居るのだとしたら」
久遠が紅紫色の目を細めた。
「せりは――
どうしてるんだ?」
それは不吉な言葉で――
「まさか…1人になって、危険に陥ってないよな?」
――…俺を見る。
そんなこと、俺が聞きたい。
「紫堂玲は……せりを放ってやっていたゲームに取り込まれたのか…?
もし取り残されたせりが、危険にあっているというなら」
久遠の目が、次第に剣呑なものに変わりゆく。
「オレは…。
せりを守れない紫堂玲を
――…許さない」
それは、殺気をも放つ。
そして――
「オレが…傍に居れたのなら…」
それは隣に居る俺だけが、ようやく聞き取れる程の小さい声音だったけれど。
口惜しそうに歯軋りをし、久遠は苛立ったように髪を掻き揚げながら、大会の順位を表示している画面を睨みつけた。
それは…久遠の本音の吐露なんだろう。
隠し切れない、芹霞への想い。
俺は久遠が嫌いだ。
だけど共鳴してしまう心。
自分が芹霞を守りたい、その愛情だけは心が感じ取って震える。
"約束の地(カナン)"から動けない久遠。
動向を隠さないといけない俺。
もどかしい思いで、ただ不安に煩悶しているだけの…己の無力さ。