シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 



「まさかさ――

そこの大画面に逃げちゃってたりして。

あははははは」



その芹霞さんの笑い声に、私は動きを止めた。


「あはは……って、桜ちゃん、何でそんな真剣な顔するの!!? 冗談に決まってるでしょ!!!」


玲様はあっさり捕まる方ではない。


何より紫堂の…電気の、電磁波の力を持っている。


それが効果がなかったのだとしたら。


打ち消す性質を持つ"無効"か――

同一色に埋める性質を持つ"同期"――。



「無効…

まさか…久涅?」


「久涅? ああ来たけど直ぐ帰っちゃった。桜ちゃんも知ってるんだ? 面白い人だよね、直ぐあたしからかって遊ぶけど」


芹霞さんは――


久涅の記憶も失っているのか。


そんなに打ち解けた顔をして。


――櫂様を追い詰めた張本人なのに。


ああ、櫂様を彷彿させる記憶を丸ごと消してしまったのか。


「Zodiacのライブが始まった時帰ったよ? 何しに来てたか知らないけど」


「その時、玲様はいらっしゃったんですか?」


「うん。玲くんは居て、それで…」


そして芹霞さんは、憂鬱な顔つきをして言い淀んでしまった。


「あたし…早く玲くん助けて、まず謝りたいんだよ」


そう芹霞さんは無理矢理笑いを作った。


何か…あったのだろうか。


そう言えば、芹霞さんは"理解したい"と何度も言っていた気がする。


ああそれより。

玲様の力を無効化できる久涅が居ないというのなら。


玲様が消えた原因は他にあるというのか。


無効ではないというのなら――


「ああ、あたしのニセモノ、とっちめてやりたい」


そういえば、そう言っていた。

芹霞さんのニセモノ…。


それは先程の玲様のような、使い魔の可能性が高い。


それに誘われ消えた玲様。

無効化されていないのに、電気の力が使えなかった玲様。


玲様は、何があっても芹霞さんを置き去りにする方ではない。


きっと…玲様すら予想外のことが突然起こったのだ。



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