シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「玲~~ッッッ!!!

この確信犯~!!!


芹霞もッッッ!!!

お前も拒めッッッ!!!

何だその…"ぽっ"はッッ!!!」


絶対。


「なんか野犬がワンワン煩いね」


玲の奴、絶対わざとだ。

絶対、わざと見せつけてる。



「誰のせいだ、誰のッッ!!!」


「あれ…僕、お前のことだなんてひと言も言ってないよ? "野犬"って言っただけで。何だお前…犬だったんだ。ああ、そうかそうか。じゃあ"ティアラ王子"って呼んでやろうか」


「…!!!」


「…よかったじゃないか、玲様と同じ"王子様"で」


「!!!!」



「お前達「ねえ、玲くん」


俺の怒りを遮ったのは芹霞で。


ああ、俺の姫。


俺…不発に終わって、消化不良なんですけれど。


「"虚数"がどうしたの? 何で数学のお勉強?」


こてっと首を傾げた。


俺思うんだけれど…


芹霞は、俺に対する態度と玲に対する態度って違うよな。

それは櫂に対するものともまた違う。

どれが素のあいつだ?

誰が自然なあいつの姿を見せて貰えているんだろう。


「ああ、芹霞。虚数とは…説明出来ないものを説明させる為の理論値であって、いわば曖昧さに形を与えられたようなものだ。

とりわけ「0」と「1」の2つのみで構成されている電脳世界には、ありえない存在なんだ。だってさ、0を2乗しても、1を2乗しても…絶対「-1」にはなりえない。負の要素は持ち得ない。

それなのに僕が見てきた電脳世界にはそれが存在して増殖して…0と1、正を食らって…世界を凌駕しようとしてたんだ。

これは…即ち電脳世界の危機だ」


俺は電脳世界の事情なんて全然判らねえけれど。


「"負"が大きくなるなんて…まるで瘴気みてえだな」


俺は言った。

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