シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「つまり" 10km"に180度という"-1"を掛けたら、"-10km"となり、それにまた180度という"-1"を掛けたら、" 10km"になった。
即ち、360度回転すれば、" 10km" × "-1" × "-1"= " 10km"になったんだ」
芹霞はこくりと頷いた。
「だったらね。今度は…" 10km"の右端から、左に90度回転させたものを"i"とすると…つまり、真ん中の始点から言えば真上にある"北方向"に10km進んだということだけれど、計算式ではどう表現出来る?」
「" 10km"×"i"」
ちゅ。
むかっ。
ぎろっ。
玲と俺と桜は、もう言葉がない。
「だったら、そこから更に90度回転。やはり"i"として表現すると?」
「" 10km"×"i"×"i"」
ちゅつちゅっ。
むかむかっ。
ぎろぎろっ。
「その計算をしたら、" 10km"から始まったものは…どの位置にあるかな」
「90度に回転して、更に90度回転するんだから…真西の、"-10km"かな」
「ん。良くできました」
ちゅ~。
「長いッッ!!!」
「問題はそこじゃないだろうがッッ!!! てめえも、考えろッッ!!!」
「つまりは…90度を2回回転させた結果は180度回転させた結果と同じ。
" 10km"×"i"×"i"=" 10km"×"-1"。
左右の"10km"は同じだから消すとにしようか。この方程式を解いてみて?」
「ん……と、"i×i=-1"」
「正解。即ち――
2乗したものが"-1"となる。
それを"虚数"と呼んでいるんだよ」
ちゅっ。
「あ…ほっぺにしようとしたら、唇にずれちゃった。ごめんね?」
にっこり。