シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「……今は、まだだ」


俺の言いたいことを悟ったんだと思う。


突如俺に背中を向けた玲の声は、抑揚無い…固いもので。


そこに…


玲の意志が見えた。


"今は"


まるで切羽詰まっているかのような…


「玲?」


「今、"お試し"だ」


どくっ。


"お試し"が何を意味するのかぐらい判っている。


それは、芹霞を意識させるための玲の切り札だ。


勿体ぶって時期を見ていた癖に…なんでこの時に?


何より――

櫂が居ない時に仕掛けるなんて、玲らしくねえ。


そんな抜け駆けみてえなことができるなら、きっとこいつはさっさと行動起こしていただろう。


「このこと櫂は……」


言いかけて、桜に睨まれ…口を噤んだ。


その目が言っている。


"誰が聞いているか判らないから、迂闊なことは言うな"


確かに。



そんな時だった。


「櫂って…煌が仕えてた人? 死んじゃったんだって? これから煌は玲くんに仕えるんだよね、桜ちゃんと」


芹霞がそんなことを言ったのは。


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