シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「じゃあなんで、電脳界は異質な師匠を受入れたんだろう? ただひたすら電脳世界ツアー見学させようとしたわけじゃあるまいし」
「これも推測だが、人間界からみた電脳世界は0と1の2種だが、人間界は実数の世界だ。数字は、0と1以外に存在するし、正だけではなく負もあれば小数、分数・・・あらゆるものが存在し、おまけには説明できないものも、理論上の数字…"虚数"などのような形で存在している。虚数で時間や宇宙の発生過程も説明する奴も出てくるくらいだ。
電脳世界では唯一の言語0と1で、人間界にある実数らを…いわば"代数"のような形で説明出来ても、その数そのものは示すことができない。
そのものと理解し認識できるのは、人間だけだからだ。
機械には…真実など解明出来ない。公式というプログラムさえあれば、それに従うだけ。複雑なことは何もない、単純世界」
その顔は自嘲的だった。
いつも飄々としている面倒臭がりの癖に、それなりに頭は回しているらしい。
回る頭ならいつも回していればいいものを…。
こんなに饒舌な久遠を見るのは初めてかもしれない。
今まではどちらかと言えば…。
まさかね。
俺が喋れないから…代わりを努めようかと?
話すことで閃く解決の糸口を、自ら率先して切り拓こうとしているとか?
気のせいだ。
久遠の基本は…面倒臭がりなんだ。
ただの気紛れだ。
「人間は、人工知能を開発して、機械側から人間化を試みた。
認知心理学なるもので、人間の"心"を機械のような情報処理化して説明しようとした。
だが前提的に、心を持つ"人間"の真逆が、心を持たない"機械"だとみなしている限り、両者は同一とはなりえない。
なりえないのに"みなし"研究してるなんて、オレからしてみれば馬鹿らしいけどね」