シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

考えたのは自分のことばかり。

折角会えた煌と桜を…どのタイミングで別れるか。

そんなことが次第に頭を過ぎっていたんだ。


酷いよね。

馬鹿だよね。


こんな謎めいた劣悪な状況が重なって、皆でどうにかしないといけないのに。

ようやく会えた仲間なのに。

会いたかった奴らなのに。


やっぱり僕の心は"お試し"の続行で一杯で。

僕の心は"結婚"したくないということに一杯で。


自分のことしか考えられていなくて。


破談させるには、芹霞を手に入れるのが前提だから。


だけど、紫堂当主と周涅相手に、本当に破談に出来るか判らない状況で…だけど、最低限芹霞を手に入れねば破談に出来る可能性はぐんと低まるからと…そんなことを思っているのは、卑怯な僕の言い訳。


"お試し"に頼らざるをえない程、僕は思いつめていたのは確か。


こんなこと、誰にも言えやしない。

言える相手もいなくて。

言った所で何が変わるというものでもなく。


僕は不幸に酔い、孤独な気分で居たんだ。


皆と一緒の時でさえ。



――……今日明日中に芹霞を振り向かせなければ…僕は結婚することになる。


僕は卑怯なんだ。

芹霞から櫂を消し、ようやく出会えた煌すら、芹霞から消そうとして。


遊びではないんだ。

僕は真剣なんだ。


だからここは、"お試し"を続行させてくれ。


僕自身、結婚したくない。

僕自身、愛のない子供が欲しくない。


櫂の父親…紫堂当主のように――

その兄である僕の父親のように――

言われるがままの婚姻をすることによって誰が幸福になれたのか。

満たされぬが故に、何人もの女に手を出して子供を作って増やして…、何人子供がいるのかも判らない、誰と誰が兄弟姉妹か判らない…そんな混沌の中、使えそうな血の濃い子供だけは道具のように利用されて。

そんな子供も気分を損ねれば追放して、都合のいい時に呼び寄せて、助けを求める手も振り払う。

使えないと判れば手の平返し、侮蔑して唾棄して…そして自ら虐げる環境を率先させて作り出す。


愛のない…そんな父親になれっていうの?


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