シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「芹霞――…


櫂を…

忘れてよ」



僕は芹霞を抱きしめながら呟いた。


そう言わないといけない程、恋心だけが募って。


もし芹霞の夢が幸せだというのなら。

今在る僕だって幸せになりたかった。



「櫂は…存在していない」


そして僕は罪に塗れていく。

罪悪感を募らせ、僕の心は黒く染まっていく。


「櫂は…いない男…だ」


どこまでも自分勝手な、愚かな罪に塗れていく。



「君が愛したのは…僕だよ」



嗚咽交じりの僕の声は、櫂への呪言となる。


僕は櫂が好きだ。

櫂を助けたい。


だけど。



「君が愛して仕方が無いのは…


――紫堂…玲だ」



僕は泣きながら、芹霞の身体を抱きしめた。



強く、強く――。


自分の虚しさを掻き消すかのように。
< 480 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop