シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「黄幡…?」


「ああ、大学生の子なんだけれど。姿は…ちょっと凄いかもしれないですが、中々多才で頭の回るいい子で。よくビルの休憩室で会うんで、仲良くなった子ですよ」


「それは…黄幡、計都…?」


玲くんが低い声を出した。


「名前までは知りません。でもまあ彼は気さくだから、使ってなければ音響設備くらい見学させてくれると思いますよ。先に聞いてみます」



あたしは…玲くんと顔を見合わせた。


計都は…バイトで大変だと、過去語っていた気はするけれど。


何処までが本当で何処までが嘘か判らない。


店長さんは内線で聞いてみてくれているらしかった。


「あ、残念。今日は黄幡くんはお休みだそうです。しかし掛け合ってみたら、見学させてくれるらしいですよ、行ってみましょう」


そして玲くんは、店長さんとあたしとは反対側に歩き出して。

店長さんの合図で、店員さんがあたしの両腕を掴んで、ずるずると引きずるようにして隣のスタジオに連れて行く。


「玲くん、カムバーックッッ!!!

ヘルプミーッッッ!!!」


ずるずる、ずるずる…。


あたしの叫びは、


「芹霞、愉しみにしてるよ?」


玲くんの笑顔と――


「!!!?」


投げキスに掻き消された。


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