シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

画面には、1人部屋に残された久涅が映っている。


歩き回るでも調べるわけでもなく、蓮が入れた珈琲を優雅に啜って窓の外を見ている。


静寂。


荒々しい空気で包まれていた久涅から窺えるのは"静"。


少し見ない内に、顔の刺々しい険しさも薄れたような気がする。

穏やかさが出たというべきか。


それは何に起因することなのか。


俺が居なくなったことに対してなのか。

既知たる久遠を目にして、懐古的になっているのか。

他の理由なのか。


それでも――

その顔は俺のもののまま。


着ている服や装飾品は派手派手しく、その雰囲気は毒々しい程低俗に思えるものままなのに。


それなのに――

珈琲を啜る所作は…まるで玲のように優雅だった。


久涅といい玲といい…外貌がどうであろうと、無意識にしても外に滲み出てくる"優雅さ"というものが、1度たりとも親父に認められた上で次期当主になった者に共通するものかと思えば…親父に認めさせるために"強制的に覚えた"俺とは、本質が違う気がした。


久涅が真実で、俺が偽者のような気すらしてくる。


俺は――

真実の俺だというのに。


ああ、どうしても…

俺は"模倣"という言葉が気になっているらしい。



「紫堂~。とりあえず此処は大人しくしようよ。紫堂だけではなく、まあボクも同じ立場だろうな。久涅に見つかれば、ボクが此処に居る理由から色々勘ぐられる。

少し動くのは辛抱しよう。そのテレビ中継だかなんだかっていうのが終われば、また自由がきくはずだから」



本当にそうか?


俺の中で渦巻く不安。


久涅が突然此処に現われた理由。

久遠と共にテレビに映る理由。

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