シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

しかし、俺は俺で。


整形もしてねば、久涅を手本にしたわけでもなく。

第一俺は、今回のことがなければ…此程俺と久涅が酷似していたということすら知らなかった。


そうだ。


玲すら判っていなかったのはどうしてだ?


玲にとっては、久涅は前次期当主であり、肩書きを奪った相手。

玲は…久涅の顔を過去見る機会はあったのではないか?


確かに年月は経ちすぎてはいるけれど…


玲の記憶すら透過するということは――

以前の面影がない…と考えられないか?


それがどうして、今の俺の姿にて酷似する?


――芹霞ちゃあああん!!


8年前に姿を変えた時から、俺の真実はこの姿だ。


模倣などありえない。

これは"自然発生"だ。


俺は…俺だ。


「久涅のことは…久遠様に聞かねばならぬな。今久遠様は…風呂に入って着替えをされている。そこからは久涅と共の行動になる。聞くことは難しいな」


蓮の戸惑った声。


「生中継だというから、その画面に…以前紫堂玲が取付けたチューナーでも動かし、テレビ番組自体を見ていれば、久涅の行動は目で見えるだろう。

いいか、紫堂櫂。くれぐれも…久遠様を追い詰めるような軽率な動きだけはしてくれるな。久遠様はお強い。しかし、今は…"約束の地(カナン)"には大勢の人間、子供がいる。此の地を血に染めたくないのだ、久遠様は」


――…せりが此処を愛してくれるのなら。この場所に笑顔が増えているのなら。


「久遠様のお心を汲み取ってくれ。頼む」


蓮が頭を下げてくる。
< 506 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop