シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


どうして相手が俺じゃねえのか、

そればかりを思ってしまう。


捨てなきゃいけねえ恋なのに、

捨てたくねえとしがみつく俺がいる。


消すことで芹霞の近くに居られると思えども、

消さずに遠くからでも見つめていたいと思う俺がいる。


俺の心が――

芹霞の心を欲しがって泣き喚いている。


消さないで。

終わらせないで。


泣いているのはまるで…駄々っ子。

男としてはあまりに情けねえその姿。


それでも俺は…

大事な心を捨てることは出来なくて。


芹霞を…失いたくなくて。



「桜…。頭と心がバラバラで、狂いそうだ。

俺は…あいつらに酷えことしでかして、その慈悲で救われてきたのに。だから俺は、それだけに満足しねえといけねえ、それ以上の幸せを望んではいけねえと判っているのに…抑えようとすればするだけ…想いが強まるって何よ?」



判っていた。

判ってはいたんだ。



櫂がいて、櫂に敵うはずもないのを十分承知の上で――

それでも諦められずにいたのは俺の身勝手さ故に。


あいつらに俺より遙かな絆があること、判っている。


俺に踏み込めれねえ領域があるのも判っている。


俺には"永遠"も"運命"も向けられていないことは判っている。



「本当に…諦めなくちゃって思ってんだよ、桜…。

それが罪に塗れた俺なりの贖罪だって…頭では判ってるんだ」



だけど…


「俺だって、櫂にも負けねえ絆があるんだと…対抗してしまうって何よ?

少しずつ…亀のような遅さだろうと、進んでいたと思っていたのは俺だけなのかって…まるで諦める気持ちが全面に出てこないのは何でよ?


――今。


たった今…俺、いつも通りの芹霞に会ってきたばかりなのに、ふざけんなって芹霞にすら怒鳴りたくなっているのは何故よ?」



芹霞…


お前は全力で俺を取り戻してくれたのに。

俺に寄りかかって無防備に寝ていたくせに。



「心が、まるで納得しねえんだよ、桜ッッッ!!!」

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