シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「思えばさ…俺、始めは戸惑ってぐだぐだになってお前に怒られ、櫂に隠せと言われたのに隠しきれなくて。身の程知らずは十分承知の上で堂々と櫂にも宣言し、ご大層なことお前に言って…それでこの有様での結末とというのは…情けねえや」


"結末"?


俺の心は納得していねえ。


櫂の記憶がないのなら、まだ間に合うのでは?


そんな思いばかりが胸に過ぎるんだ。


「芹霞にさ、諦めるってもう…言ってるんだ、長浦で。だけどあいつ優しいからさ、俺…再会しても、嬉しくて…いつもようにあいつを見てしまったけれど。


だけど蛆が出て、玲にしては珍しく、2人にして欲しいと言われて…馬鹿な俺ははたと現実を思い出したんだ。

以前とは変わったはずの現実。

俺…何、なかったことにしてるんだろうって。

何一つ俺には失うものがないままに、何でいつも通り、独占欲出していられるのかって。

何の権利をもって?

俺には愛を語る資格ねえし、俺は舞台を降りねばならねえ。

俺は芹霞を諦めて…俺の本来の仕事、俺が出来る"やるべきこと"に集中しないといけねえって」


だから――

俺は玲を引き留めも出来ずに。

精一杯、虚勢を張って。


何度も何度も…心で芹霞の腕を引いた。


「………」


「玲のもがく心もよく判るんだ。

けどさ…。芹霞の心が既に…櫂を選んでいるというのなら、

幼馴染たる俺は、あいつらを祝福してやんねえといけねえ。


――頭では、判っているけれどッッ!!!」



ああ、もう…――



「何でだよッッ!! 

何で今なんだよッッッ!!!」



発狂しそうだ。


櫂のものになる芹霞を考えただけで、

嫉妬で全身を掻き毟りたいこの衝動。



全然…俺の心は納得してねえんだ。



「煌……」



あまりに溺愛しすぎて、もう抜け出せない程…

俺は…考えている以上に芹霞を求めてた。


自分が認識しうる以上の、想いの強さだけが思い知らされる現実。


絶望より何より、

想いだけが膨れあがる現実。


心が思考に納得しねえ。


宥めても何をしても…心が暴れ回る。


現実を認めようとしねえ。

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