シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「2つに分かれた闇石のうち、1つは君が持っていたけど…もう1つは、第二保健室で…君が切り札のことを言い出した時、神崎の為にとボクに渡しただろう?
ボク、それを忘れていたんだれど…姉御に言われたんだ」
――坊の石を寄越せ。
「師匠が金翅鳥(ガルーダ)を消して…葉山と君の元に進んだ後だったね、横っちょで隠れていたボクを見つけだした姉御は言ったんだ」
――坊の死を"必然"とするには…石が必要だ。
――案ずるな。二度目に、失敗などない。
"二度目"
それは――
芹霞のことなのか。
久遠が嘲るにして言った。
「もう芸術の域だよ、緋狭の技は。もう1mmでもずれていれば、間違いなくお前の心臓は破壊されていた。そんなぎりぎりの処で空洞をあけ、肋骨の隙間に…お前の闇石を埋め込んだ。ちょっとやそっとでは外れないよう、しっかりと。
そしてお前の闇の力は、自ずと…お前の石に流れ込み、肉体的には完全に動きを止めていても、生命の中心は…何とか闇石の力で闇には沈まなかった。
計算し尽くされた、本当にぎりぎりの所でお前は緋狭に"生かされ"た。
そして多分…周囲の、とりわけ…せりの悲鳴が、お前の死を大々的に演出したんだろう。
闇石で命をつなぐなんて…正気の沙汰ではないね」
芹霞…。
8年前に、緋狭さんが芹霞を助けてくれたのと同じ方法で、俺を助けてくれたのか。
真紅で繋がれた芹霞との絆は…
緋狭さんも繋がっていた。
――坊は、死なねばなりませぬ。
緋狭さんは…
俺を見捨てなかった。
そう思えば…
目頭が熱くなって。