シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そういや…そうだ。
「"約束の地(カナン)"でも…、黄幡会のあの塔でも、お前は鎖を絶ったな」
桜の声に…
「けどよ、いくらやっても偃月刀が顕現……おわっ!!!?」
出来た。
耳のピアスが偃月刀に。
しかもいつものちっこい方。
「な、何でだ!!? 桜…お前は!!?」
「出来る…裂岩糸に」
何だよ、俺達の武器。
"約束の地(カナン)"でもそうだったけど、
顕現できたり出来なかったり。
出来なくなるならなるで、出来るようになったならなったで、そう言えよ!!!
――と言っても、言う口がないんだけどさ。
「皇城翠…お前のせいか?
それとも…朱貴のせいか?」
桜が目を細めた。
「まさかこの家は関係あるまい」
顕現出来なかった時との違いは、確かにそんなことだけれど。
今はそんなことより――
「桜、誰のせいでもいいし、時間切れになったからっていう理由でもいい。顕現出来るようになったのなら、俺の偃月刀ですっぱり切ってやる。下がってろ」
そして俺は――
ガキンッ。
朱貴の両手同士、両足同士を繋いでいる鎖を、偃月刀で叩き切ったんだ。
やはり櫂の時みてえに、あっけない程に鎖は切れ…俺は何だか複雑な思いだった。
渾身の力で引いてもびくともしねえ鎖が、何で偃月刀なら切れたんだろ。
小猿が…ノコギリで切ろうとしても、刃こぼれしたのに。
この偃月刀って…そんなに鋭利で頑丈なのか?
最近…手入れしてねえのによ。
偃月刀をひっくり返したり回しながら、頭の中疑問符ばかりを飛ばして、考えても答えが出ないことを考えていた俺には、
「さすがは…緋狭が認めた男だ…」
そんな朱貴の呟きが聞こえなかった。