シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
久遠に踏み潰された手の甲が赤くなってじんじんする。

布の巻いてある俺の手を、遠慮無く思い切り踏み潰した久遠。


絶対、他意あってのことだ。


ああもう…気分が悪い。


「師匠といい君といい…いっそ従姉妹になっちまえよ。何だよそのきめ細かいお肌。化粧したら益々引き立つそのお顔。なんて絶妙な位置に、綺麗なパーツが揃っているんだろうね。神様不公平だよ。まあ君の場合は、目が切れ長すぎるから…アイシャドウで少々目尻をぼかさせてもらったけれど…ああ、なんて凛々しい、ミステリアスな美少女なんだ。しかも無口設定とは!! 儚げな師匠とは正反対で七瀬を更に強くしたような…この"COOL BEAUTY"さが溜まらない」


俺は――褒められているのか?


鏡がないというのが、

何でこんなに不安になるのだろう。


俺の想像する限り――

俺はただの厚塗りしたピエロ。


いや、"ゲテモノ"に相違ないんだ。


俺は玲とは違うんだ。



「神崎に見せたいねえ。君と師匠と七瀬が揃ったら、神崎は完全KOで…百合畑から帰ってこなくなるよ」


………。


「いっそのこと、久遠も女装させるか。久遠は久遠でまた"高慢女王様"風の美女になるだろうさ。そうだ、4人でシンデレラでもしたらどうだい。そういえば女装の本家本元の葉山がいたね。如月はノーサンキュー、色と頑丈さから言って、"かぼちゃの馬車"だ。

よし。3人の継子と魔法使いとシンデレラ。

継母久遠と天然ボケ七瀬の魔法使いとかぼちゃの如月は決定として…誰がシンデレラをする? 女装初記念で、君がしてみるか?」


思わず――

想像してしまった俺。


久遠のいびり、玲のえげつなさ、桜の…煌に対するような態度に耐えに耐え、落ちぶれ果てた俺を救うように七瀬は現れ…


「七瀬は君に笑顔で魔法の"蛆"を食べさせ、腹痛を起こした君は、かぼちゃの如月におんぶられて舞踏会に救急搬送だ」


話が変わってるぞ、遠坂…。
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