シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ちょっと、久涅!!!
玲くんに何すんのよ!!!!」
そう思い切り睨んで見上げたら。
「――!!!
また…その目!!!
お前は――
今度はこの男を庇うのか!!!!」
憎々しげに歪んだ顔。
また理解不能な言葉を言い出した。
「優しい玲くんを殴るからでしょう!!?
それに"今度は"って何よ!!!?」
そう叫ぶと――
「久涅!!!」
玲くんの慌てたような声が、何かを言いかけようとした久涅を遮った。
そして久涅は、大きな舌打ちを響かせると、ずんずんと歩いて視界から消えてしまった。
「何か久涅、機嫌悪いんだ。直前までお出かけしようとか言って機嫌良かったのに。感情の起伏が激しい人なんだね。大丈夫? まだ痛い?」
玲くんの痛々しい…つやつやほっぺを撫でながら言うと…
「……お出かけ?」
玲くんの声が…突如低くなった。
それは此の場を凍り付かせるに十分な程の威圧感があった。
「芹霞。どうしてあいつとお出かけ?」
頬にあるあたしの手を、玲くんは思い切り力をこめて掴んできた。
その握力に締め上げられた腕は、ギリギリと骨が軋むような不穏な音を立てた。
「痛い、痛いよ、玲くん…」
そう言うと、はっとしたように玲くんは手を離した。
「ごめん、僕…」
癖のようになってしまった"ごめん"はまるで威力はなく。
…玲くんが苛立っているのがよく判った。
一体何だって言うんだろう。
お仕事、大変なんだろうな。