シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
その時、廊下が騒がしくなって。
ドアをこっそり開けて見たら…
後ろ向きの久涅が誰かと喋っていた。
ちらりと見えるあの髪の色は――
「玲くん、帰ってきたんだ!!」
途端あたしの心は跳ねる。
やっぱり玲くんの姿を見れば、あたしは落ち着く。
玲くんは濃茶の背広姿だった。
いつもラフな格好ばかりしか見ていなかったあたしとしては、最近ようやく玲くんの背広姿に慣れてきた。
中性的な顔立ちの玲くんが背広を着用すると、すごく"男"に見えて仕方が無い。
いや、元々"男"なんだけれど…優しさ以上に、異性としてのフェロモンを際立たせる。
それはあたしを鼻血に招く色気とよく似ている。
由香ちゃんがここに居たら、"スーツ萌え"とか言うんだろうな。
煌も桜ちゃんも、紫堂に仕える身なれど…背広なんて着たことないから、凄く新鮮な光景で。
まあ玲くんは20歳で、れっきとした成人男性だから…似合って当然なんだけれど。
玲くんは――
久涅と言い争いをしているようだった。
そして久涅は――
「玲くん!!!?」
何と、玲くんの顔を殴ったんだ。
あたしは驚いて慌てて廊下に飛び出して。
「玲くん!!!? 大丈夫!!!?」
床に崩れた玲くんの身体を抱き起こす。
玲くんの白い頬が…きめ細やかな白肌が、真っ赤になっていて。
どれだけ力を込められたのかが見て取れる。