シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
それしか方法はない。
僕も一緒に生き延びようとするから、話は難しくなるんだ。
僕が此処で、例えひと時でも全ての攻撃を食い止めれば、少なくとも芹霞も三沢さんも無事なはずで。
それは単純な解決方法。
要は、芹霞達が無事に――
逃げ切りさえすればいい話。
僕のことなど――
考える必要はない話。
「早くッッッ!!!」
「随分と献身的なことですわね。全ての攻撃を食い止められるとでも思っているんですの?」
6つの鉄環手が空に放たれる。
僕は宙に舞いながら、その1つを掴んで、まるでテニスのように他の環を打ち返していく。
車に向かわせては駄目だ。
天井がない車は…
上から攻めてくれと弱点をひけらかしているようなものだ。
「三沢さんッッッ!!!!」
「だけど!!!」
「男なら――
愛する人を守りたいという矜持、
汲み取ってくれッッッ!!!!」
来る。
ああ――
大勢…波のように押し寄せて来る。
「早く、行ってくれッッッ!!!!」
僕はありったけの声で叫んだ。
僕が…食い止めるから。
時間稼ぎしている間に。
早く…
早く!!!
「…くそぉぉっ!!!!!
死ぬなよーーーッッ!!!」
「え? やだ…ちょっと!!!なんで動かすの!!!?
玲くんと一緒じゃなきゃやだ、
――クマ、クマ!!!?」
「毛、毛をひっぱるなッッ!!
守りたい矜持…守れない絶望。
それが下した決断なのなら!!!
嬢ちゃんッッッ!!!
あいつは…男なんだ、男なんだよッッ!!!」
「言われなくても判ってる!!!
玲くんは――」
「嬢ちゃんが好きなんだよッッ!!!
命かける程ッッッ!!!
惚れ込んでいるんだよッッッ!!!
俺は――
嬢ちゃんを安全な場所に連れるッッッ!!!」
ありがとう、ありがとう。
「クマクマクマ!!! 冗談よして…どうしてドアが開かないの!!!?」
「例え毛を毟り取られても車を出すッッッ!!!
俺のように"絶望感"をあいつには味合わせたくないんだッッッ!!!」
そして――
「やだやだやだッッッ!!!
玲くんッッッ!!!!
玲くーーーーんッッッ!!!!」
その声を最後に、車は猛速度で走り去った。