シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
目を開けてみれば――


「玲くん、乗ってッッッ!!!!」


上方に――

ヘリから手を差し伸べた芹霞が居る。


え?


青いヘリ?


ヘリのドアが開き、片手でヘリ内部の取っ手を掴んだ芹霞が、身体を外に乗り出すようにして、僕に手を伸べていたんだ。



「後輩のヘリ、

捕まえてきたぞッッ!!!」



姿は見えないけれど…


「全ては嬢ちゃんの機転だ!!!

がははははは!!!」


豪快な三沢さんの声が響いた。


「早く飛び乗れッッ!!!

これ以上は降下できんッッ!!!

お前さんなら飛び乗れる!!!」


コマ送りのようにゆっくりと動く景色の中、ヘリ内の2人の動きだけが不思議と正常で。


早送りされているような気分。


2つの時の流れの狭間にいる僕は、まるで夢心地。


ゆらゆらとした思考に覆われて。



これは夢?

それとも現実?



「早くッッッ!!!


あたしは――

玲くんを諦めないからッッッ!!!」



それは――

僕を引き戻す魔法の呪文のように。



何て衝撃的な言葉だろう。



「絶対、諦めて――

1人でなんて逝かせないから!!!」


何て感動的な言葉だろう。



ああ…。


芹霞。


まるで王子様みたいな芹霞…。

格好良い芹霞。



王子様の愛で…

止るようにゆっくりと動いていた時の流れが、静かに静かに動き出す。



緩やかだけれど、確実に。


元の早さになっていく。


僕の時間に戻っていく。


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