シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「玲くん――
諦めるなッッッ!!!」
――玲、諦めるな。
広げられる、救いの手。
――諦めるな。
「僕だって――」
そう僕だって本当は…
「諦めたくないッッ!!!」
君と生きたい!!!
僕は――
下に向けて放った外気功で、重力を相殺すると同時に飛び上がり…しゃがみ込んで精一杯腕を長く伸している…芹霞の手の平を掴んだ。
離さない!!!
離すものか!!!!
強く握り合う手と手。
芹霞の身体がこちら側に傾きそうになる。
「芹霞、少しふんばって!!!」
僕は握ったままの手を軸にして、宙で大きく半回転して身体を更に上方に持ち上げると…そのまま足から滑り込むようにしてヘリの中に入った。
バタン。
芹霞がタイミングよくドアを閉めて。
「よしッッッ!!!!
玲くん――
お帰りッッッ!!!」
芹霞の満面の笑みが出迎えてくれた。
それを見た時、
泣きたい気分になった僕。
「ただいま…」
そう僕が笑うと同時に――
ヘリは上昇した。
ドゴォォォォン。
音と共にヘリが大きくぶれた。
それでもヘリは負けじと上昇する。
安定に向かっていく。
窓から覗けば――
地面が轟音を立てて陥没していくのが見えた。
それに飲み込まれて…制裁者(アリス)が消えていく。
有明地区の崩壊。
1秒たりとも遅れていたら、僕もヘリ自体も…
巻き込まれていただろう大惨事。
助かったのは奇跡。
魔法のような奇跡。
その中でただ一人。
雅だけがこちらを向いて、手を振っていて。
――否。
あの元気な様は…凱か。
「楽しい――
地獄の旅を!!!!!」
何を叫んでいたのか聞こえなかったけれど。
僕を見送る様が…
悔しげであると同時に、好意的なものに思えて。
僕があの場から逃れることが、
必然的な事象であったかのように思えたのは何故だろう。
凱や雅は――
本当に僕を殺す気だったんだろうか。
凱が新生集団の初任務で、"悔しい"と表現したのは?
雅が"送って"やろうとしたのは何処へ?
様々な疑問が渦巻いた。