シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「き、着替えくらいないかな、あの箱に」


四つん這いで、四肢をしゃかしゃかと細かく動かして、タオルを取出したあの青い箱に寄った芹霞。


ゴキブリみたいだとは言わないでおこう。



ズコッ。


途中で派手に転んで、


「ひ、ひ~ん…。擦りむいた鼻から、別の意味で鼻血でそうだ…」


そんな声が聞こえてきたけれど。


スカートがめくれた途端に、顔を背けた僕を褒めて欲しい。


「着替え、着替え…」


着替えがあれば吃驚だね…。


「あった!!!」


あるのかよ…。


「しかも――!!!」


芹霞が僕に青いトレーナーを見せた。


「じゃじゃ~んッッ!!!

ティアラ姫の…紳士版!!!」


絶対、嫌だ!!!


「あるんだね、紳士服!!!

今度の玲くんの誕生日に…」


「いらないから…」


その動揺が、意志の力で押さえ込んでいた心臓に負担をかけた。


どくどくどく…。


やばい…。


薬は無いんだ。


取りあえず…落ち着かねば。


しかし乱れる呼吸は中々整わない。


「ああそうだ!!!

――玲くん発作は!!?

胸押さえてたのが見えたんだけれど!!

実はね、この中に…」


僕が答えるよりも早く、箱から、青い色をした小箱を取り出した。


青い十字のマークの箱。


何処までも青の色。


「確かあったはずなんだ…2種類…」


それを開けた芹霞は、中から青いプラスチックシートに入った2種類の白い錠剤を取り出し、僕に見せた。


何でこんなに都合よく"救急箱"も用意されていて、"この薬"と"この薬"まであるのか判らないけれど、


「ニトロだよ。ほら、こっちは裏に"にとろ(その1)"、こっちは"にとろ(その2)"って書いてあるし。どっちが必要なんだろ」


芹霞が首を傾げた。
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