シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「いやいやサクラチャン、そう言われると俺、照れちゃ「桜。くれぐれも気をつけろ。夢に…もっていかれるな」
氷皇の戯言を阻害するように、緋狭様は言った。
「私達は…夢の住人。決して、私達のように"囚われる"な」
「あはははは~。うまいね、ア「判りました、緋狭様」
「俺、泣いちゃうよ、何で無視? 何で無視!!? こんな扱い初めてだよ~しくしくしく」
「何処かで何かがほざいているが、ここは気にせず行け」
「はい、桜はまるで気にしていません」
「そうか、そうか。それはいい。ただ桜…」
「はい。こうして和やかに会話が出来るのは、今だけということですね。この先相対する時は、本心がどうであろうと…敵対しているかもしれないと」
「そうだ。"あいつ"に…坊が"生きて"いるとばれてしまったら、次こそ…本当に坊の命はないと思え。その時があれば…私は、永遠に坊の命を奪わねばならない。永久の闇に沈め、蘇生など望めなくせねばなるまい」
そこまで…櫂様という存在は"厄介者"なのか。
"あいつ"
それは少なくとも、氷皇ではないことは確かで。
当主か。
久涅か。
それ以外の誰かか。
緋狭様の指し示す人物は判らないけれど。
そして私は――
色彩強い2人と別れて、5日ぶりの外界に出た。
涼しい風が、冷ややかな青色に染まった服を滑る。
記憶にある――
廃れた墓場が、周囲に立ち並んでいる。
やはり――此処は、
元制裁者(アリス)の実験施設。
恐らく此処は…雑司が谷。
想像通り…かつての制裁者(アリス)を育成していた施設の残骸で、私は治療されていたのだ。