シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

いつものおちゃらけた表情を消して、まるで氷のような冷たい顔で朱貴を見下ろす様は、素の氷皇を錯覚させた。


「お前は、楯突く気か…」


纏う空気が違う。

口調すら刃物のように鋭い。


「穢らわしい身体で、

紫茉に触れるな」


怒って…いるのか?


七瀬を…妹を助けた朱貴を?


その時、目を剥いた裸の女が背後から周涅に襲いかかってきたが、1発の肘撃ちで斜めに飛ばし…ぎゃんぎゃん騒ぐ小々猿犬に衝突させた。


赤銅色の視線は…

灰になった黄色い布。


静かに静かに、その目が細められる。

苛立ったように。



そして――



「やめろ!!!!」



周涅は、俺の制止の声も聞かず――朱貴の腹部を蹴り飛ばしたんだ。

穢らわしいものを七瀬から引き離すが如く。


そして転がった朱貴の喉元を、足で踏み潰したんだ。

容赦なく――。


「懐かしかろう、それでも手加減はしてやっている」


くつくつくつ。


無表情で笑うこの男は何者か。


くつくつくつ。


どう見ても…赤銅色の氷皇で。


朱貴が苦痛に身を捩る。


制そうとした俺は――


「朱貴。お前の横槍のせいで…紫茉がどうなるか、判っているのか!!!?」


凄んだ周涅の恫喝に、思わず総毛立ってしまった。


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