俺様専務とあたしの関係


え?


聞いていない?


何で話さなかったんだろ…。


「だから、家へ来ちゃったんですが…。美月さんが私を誰か聞かれなかったから、ああこの方が章人の新しい恋人なんだって分かりました」


「はい…。お名前を聞いてすぐに、章人の元カノさんだって分かったので…」


話し方はハキハキとしていて、それでいて威圧感がない。


蒼衣さんて、思った以上に賢そうで優しそうな人だ。


それにしても、もし今夜あたしがいなくて章人と二人きりだったら、どうなってたんだろう…。


そんなあたしの気持ちに気付いたのか、蒼衣さんがこう言った。


「実はここへ来た理由は、章人に結婚式へは来なくていいと伝えに来たんです」


「え?それは、どういう意味ですか?」


「招待状は、私の婚約者が無断で出したものだから。章人への当てつけでね」


何それ…。


ひど過ぎない?


小さく怒りを覚えていると、蒼衣さんは言った。


「彼ね、章人への後ろめたさとコンプレックスで、私との仲を見せつけたいだけなのよ」


「あの、さっきから聞いていたら、あまりにもヒドイんですけど。蒼衣さん、何でそんな人がいいんですか?」


つい口に出てしまい、後悔をする。


いくらなんでも、初対面の人に対して失礼過ぎた。


だけど、蒼衣さんは気を悪くするどころか、悲しそうな顔をしている。


「言い訳だけ、させてくれる?でも、章人には言わないで欲しいの」


「言い訳?」


「ええ。本当は、誰かに聞いて欲しかったの。美月さんは章人の恋人だもんね。だから、聞いて欲しいの」




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