俺様専務とあたしの関係
それからの時間は、あっという間に過ぎていき、気が付けば蒼衣さんの結婚式まで一週間を過ぎていた。
章人は、最近とても忙しくて、出張で二週間も留守にしていた事があったほど。
それでも毎晩電話は欠かさず、帰って来てからは、一段とあたしを離してくれなくなった。
傍から見れば、バカみたいに写るかもしれないけれど、あたしはそれでも愛情をたくさん示してもらえて満足だった。
今まで生きていた中で、これほど人から愛情を感じた事はないくらい。
そんな穏やかな日々を過ごしていたある午後、蒼衣さんが突然やって来たのだった。
「美月さんと、ゆっくり話しがしたくて…」
手土産に、オシャレなケーキを持ってきて、変わらない綺麗な笑顔を浮かべている。
「突然でごめんなさい。章人に美月さんへ、私が来る事を伝えてもらおうと思ったら、会議みたいで繋がらなかったから」
「いえ、いいんです。あたしは、毎日けっこう暇なので」
そっか。
今日は会議なんだ。
あたしが秘書を辞めてから、章人には専属秘書はいない。
代わりに総務課の人たちが、秘書業務を兼任しているのだった。
「美月さんがよければ、連絡先を教えて貰えたら嬉しいな…」
はにかむ笑顔で言われ、あたしは二つ返事で番号を教えた。
今だから思える事だけど、章人はこんな可愛い人より、あたしの方がいいんだ…。
不思議…。
「美月さん。半年前、章人に、私を追いかける様に言ってくれてありがとう」
「そんな…。あたしは、勝手に口止めの約束を破ったんです。お礼なんて、やめてください」