俺様専務とあたしの関係
「あれ?大丈夫か?お姉ちゃん?」
さっきの現場監督より、まだ年上に見える痩せて小柄なオジサマが、あたしに心配そうな顔で近付いてきた。
この人も、ここの現場監督らしい。
「だ、大丈夫です」
慌てて折れたヒールを拾いながら、穴があれば入りたい気分だ。
そして監督の後ろでは、専務がおもいきり呆れた顔をあたしに向けていた。
ああ…、視線が痛い。
思わず目をそらすと、左右の靴の高さが合わなくなった為に、またもよろめいてしまった。
「大丈夫かい?」
好意で監督が手を差し出した時、
「すいません。ご迷惑をおかけして。手を取る事を失礼します」
そう言って、サッと専務はあたしの手を取ったのだった。
「いやいや、構いませんよ。立つのも大変でしょうから」
気のいい監督は目を細めると、また仕事の話を再開した。
「あ、あの…。専務、手を…」
「いいから、今だけおとなしく繋がれてろ。向こうが気にする」
小声で耳打ちをされ、頷くしかない。
専務はあたしの手を繋いだまま、自分の腕を背中の後ろにまわし、少しでも目立たない様にしてくれていた。
話が終わるまでの1時間、あたしの胸は情けなくもドキドキしっぱなし…。
大きくて、ゴツゴツとした温かい手にときめくなんて、あたしらしくない…。