センチメンタルブルー
そよ風が吹いて風鈴が優しく鳴った。
ギラギラした毎日の暑さの中に、この音色ひとつで爽やかさを運んでくるとは、風鈴もなかなかどうして優れたものだ。
哲夫さんは残念ながらトイレに行ってしまっていて、風鈴の第一声を聞けたのは哲夫さん以外の私たち三人だけだった。
「風鈴ってほんとにいいですね。わたしほんと夏が好き」
仏花を作りながら独り言のように呟くと
「とみちゃんはこの暑い夏にプールに一緒に行くような男はいないの?」と好美さんに訪ねられた。
いませんよ、そんなの。私は答える。
けど、気になる人はいるかもしれません。私は思う。
この夏、なにかが変わるかもしれない。変わらないかもしれない。
とにかく私は、一ミリでも夜空くんのことを考えている。
―――――――――――
仕事を終えて自宅に帰ってきた。時刻は15時半。
私の勤務時間は朝の9時半から15時まで。フリーターの分際で働く時間はやけに短い。自分でもどうかと思う。
母の日や彼岸などは開店から閉店まで働く。
本当はもう少し働きたいという気持ちもある。
結局は甘えているだけなのだ。
実はこの家の家賃は両親が今でも出している。
私が大学生の頃に両親は仙台へ引っ越したのだが、さとみが学生のうちは払ってやると言われてから今現在に至っても名義を私に変更しない。
それではよくないと思ってはいても、今の生ぬるくけだるい日々から足を出すことができずにいる。
花屋の給料だけでまかなってしまえる自分の生活。
おしゃれな服を買い漁ることもしないし、遠出することもあまりない。
言ってみて思う、自分はつまらない人間。地味な人間。
そんな地味な私が自ら行動を起こすことは赤子が立ち上がる瞬間のような貴重さだと自負しているのだが。
それは勇気がいることの第一歩なのではなく、成長の中で必然的に起こる1ページ。
私が夜空くんへ思う気持ちや積極性は、それによく似ている。
携帯電話の発信を月本夜空に合わせ、繋げる。
私の指先は、今だけ魔法をかけることができたのだ。
しかし7コールほどなっても夜空くんの家はかからなかった。
当たり前だ、こんな昼間なのだから仕事をしてるに決まっている。
留守番電話に切り替わったら、それは夜空くんの声だった。
「月本です。ただいま留守にしております。御用のある方はそんなにいないかもしれませんが、もしもありましたら発信音のあとにメッセージをどうぞ」
それだけで私は鳥肌がふわりとたった。
夜空くんの声を聞けた、嬉しい。
ついつい一度通話を終了させてからもう一度かけてしまった。
先ほどと同じ言葉を唱える夜空くんの声。
私はメッセージを残すことにした。
ギラギラした毎日の暑さの中に、この音色ひとつで爽やかさを運んでくるとは、風鈴もなかなかどうして優れたものだ。
哲夫さんは残念ながらトイレに行ってしまっていて、風鈴の第一声を聞けたのは哲夫さん以外の私たち三人だけだった。
「風鈴ってほんとにいいですね。わたしほんと夏が好き」
仏花を作りながら独り言のように呟くと
「とみちゃんはこの暑い夏にプールに一緒に行くような男はいないの?」と好美さんに訪ねられた。
いませんよ、そんなの。私は答える。
けど、気になる人はいるかもしれません。私は思う。
この夏、なにかが変わるかもしれない。変わらないかもしれない。
とにかく私は、一ミリでも夜空くんのことを考えている。
―――――――――――
仕事を終えて自宅に帰ってきた。時刻は15時半。
私の勤務時間は朝の9時半から15時まで。フリーターの分際で働く時間はやけに短い。自分でもどうかと思う。
母の日や彼岸などは開店から閉店まで働く。
本当はもう少し働きたいという気持ちもある。
結局は甘えているだけなのだ。
実はこの家の家賃は両親が今でも出している。
私が大学生の頃に両親は仙台へ引っ越したのだが、さとみが学生のうちは払ってやると言われてから今現在に至っても名義を私に変更しない。
それではよくないと思ってはいても、今の生ぬるくけだるい日々から足を出すことができずにいる。
花屋の給料だけでまかなってしまえる自分の生活。
おしゃれな服を買い漁ることもしないし、遠出することもあまりない。
言ってみて思う、自分はつまらない人間。地味な人間。
そんな地味な私が自ら行動を起こすことは赤子が立ち上がる瞬間のような貴重さだと自負しているのだが。
それは勇気がいることの第一歩なのではなく、成長の中で必然的に起こる1ページ。
私が夜空くんへ思う気持ちや積極性は、それによく似ている。
携帯電話の発信を月本夜空に合わせ、繋げる。
私の指先は、今だけ魔法をかけることができたのだ。
しかし7コールほどなっても夜空くんの家はかからなかった。
当たり前だ、こんな昼間なのだから仕事をしてるに決まっている。
留守番電話に切り替わったら、それは夜空くんの声だった。
「月本です。ただいま留守にしております。御用のある方はそんなにいないかもしれませんが、もしもありましたら発信音のあとにメッセージをどうぞ」
それだけで私は鳥肌がふわりとたった。
夜空くんの声を聞けた、嬉しい。
ついつい一度通話を終了させてからもう一度かけてしまった。
先ほどと同じ言葉を唱える夜空くんの声。
私はメッセージを残すことにした。