偽恋
5組の前まできたあたしは、軽く深呼吸したあとこっそり教室をのぞいた。


...いないな..優斗...



「...えっ?」



いないことを確認して、しょうがなく戻ろうとしたとき



あたしの目に映ったのは



隣の女の子と仲よさそうに話す優斗の後姿。



仲よさそうっていうのは、後姿からじゃわからないけど



隣の女の子がすっごく笑顔だったから...なんとなく。



っていうか、隣の女の子はめちゃくちゃ可愛い!!



優斗も...そりゃ話すよね。


いくら女嫌いだとしても、隣の席の女子とくらい。



あたしはそう言い聞かせたけど、心のどこかに不安が消えないのは


きっとその子が、あまりにも可愛いからだよね。


あたしは気づかれないようにクラスに戻ろうとしたけど...


っヤバイ!


なんとバッチリ彼女と目が合ってしまった。


っに...逃げよう!!


あたしは逃げる体制でクラスへ走り出した。



そのとき-


「美姫」



低くてかすれ気味。


その声があたしの名前を呼んだから


あたしは振り向かずにはいられなかった。


「...優斗」


優斗は、すでに少し息を切らしていて。


...走ってきてくれたんだな。



さっき女の子と話してたから



それだけでホっとして嬉しくなった。
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