偽恋
「美姫なんで呼んでくれなかったんだよ。」


優斗はそういって、眉間にしわを寄せた。


「...ごめんね。優斗こそ、あたしに気づいたの?」


すると...


優斗は


「宇佐美が教えてくれた。お前が来てたって」


とサラっと言った。


....!!!


宇佐美....?


宇佐美...綾花。



あれ、なんであたし名前知っているんだろう?



あっそうだ。






あれは、入学式のとき。

”美姫っ宇佐美綾花って知ってる?”

情報屋の奈々が言ってたんだ。


”可愛くて、成績学年では5位以内でめちゃすごいこがいる”


って。


さっき優斗が話してたこは...きっと彼女だよね。



うん、絶対そうだ。


だってあんな美少女ほかにはいないでしょ。




「...美姫?」

「あっゴメンネ..優斗」


あたしは宇佐美さんのことを考えていて


気がつけば優斗の声すら耳に入っていなかったみたい。



そんなあたしを見かねた優斗は


「サボるぞ」


それだけボソっと言うと、あたしの手を握って屋上まで走っていった。



...こりゃまたあとで奈々に冷やかされるな。


なぁんて思いながらも、今は優斗といたいって反面


宇佐美さんの隣に戻って欲しくないってあたしのわがままで


繋がれた手を、ほどこうとなんてしなかった。
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