東京空虚ラバーズ



「たぶんこの町を創り上げた人たちは、気付けなかったんだね」

そう言ってアキラは突然足を止めた。そしてしゃがみこみ、道端の小さな小さな緑の芽を優しく撫でた。


「文明だけが"進歩"じゃないって」

僕を見上げてにやりと笑う。アキラ。僕も無意識の内に口角が上がっていた。


「行こう、アキラ」

「うん」

僕らは手を取り合った。


「浪漫だって夢だって全部飲み込んでやる。――僕は、」

ぎゅ、と握り合った手に力がこもった。


「ぼくらは、この空虚を愛してみせる」


西日の射す時間は、なんとなくノスタルジー。いつか忘れた空虚な町を、地球の哀しい夢を、ぼくらは歩く。歩き続ける。

愛しい太陽よ、どうか待っていておくれ。

この東京の空虚を、ぼくらが身体全部で愛せるその時が来るまで――――












東京空虚ラバーズ


end






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