片翼の天使たち~fastlove~





…_____





「だから…告白はしないよ」

「ずっと片想いする気?」




あたしはそんな美羽の問いかけに、苦笑いで頷いた。



だって、それしかできなかった。





傷つけられるって

突き放されるって

そう、分かってて。



自分の気持ちを体当たりで伝えれれるほど、あたしは強い人間でもない。




だって…怖いじゃない。


自分の想いを否定されて

挙句の果てに、突き放されてしまうなんて。




あたしには到底耐えられない。





ならば……片想いで構わない。






「おいサクラ!!」

「遥…翔。どうしたの?」





名前を呼ばれ、愛しい人の声に弾む鼓動。



それとは裏腹に、妙な緊張感を持ちながら振り向く。




さっきまであんな話をしていたせいか、顔を見るだけで頬が火照る。




汗でびしょ濡れの遥翔と目があって、あたしは遥翔に駆け寄った。





「ちょっと!なにこれ、なんでびしょ濡れな訳!?」

「クソ…あいつらやりやがった」




悔しそうに舌打ちをする遥翔。
あいつらって……透くんとかかな。



「俺が部屋入った途端、水鉄砲で狙いやがった」

「ぷっ!」




あ、ヤバ…。
思わず笑っちゃった。



水鉄砲とか、そんなことこの学校でするのは、ひなたと透くんくらいだろうな。





「そりゃ災難だったね」

「災難ってもんじゃねぇよ。サクラ、タオル持ってねェ?」

「うん。あるよ」

「貸してくんね?」

「教室戻らなきゃ無いんだけど」

「じゃ、勝手にカバン漁っとく」

「バカ!あたし取ってくるって!!」

「そ?サンキュー」




うわ…。

今、絶対的にあたし、遥翔の作戦にまんまと引っかかったな。





……まぁ、いいや。


だってあたし、この人を好きになってしまったのだから。





それに。


好きな人にカバン漁られても困るし…。





「じゃ、ごめん美羽。あたし行くね」

「オッケー!また放課後ねー」





あたしは美羽に手を降り、ビショビショに濡れた遥翔を見て笑ってから教室まで走った。






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