ショコラ~愛することが出来ない女~
「辞令は今月末には出す。準備しておくように」
「はい」
二人揃って返事をして、そのまま一緒に社長室を出る。
廊下で二人きりになり、庄司くんは気まずそうに私を見る。
「すいません、康子さん。こんなことになるなんて」
「いいえ。謝るのは私の方だわ。あなたの方が将来があるのに」
「俺の事はいいんです。康子さんこそ、大丈夫ですか?」
心配そうな表情。
でもね、こんなところで見つめあってると更なる噂になるばかりよ。
『痛みに笑うタイプですよね』
いつだったか庄司くんが言った言葉を思い出す。
そうね。
これくらいの痛み、なんてことない。
「平気よ。それに障害があった方が燃えるって言うでしょ」
「……」
にやりと笑ってみせると、庄司くんは苦笑する。
「あなたって人は、ホントに」
「さ、仕事に戻るわよ。辞令が出るまではあなたもこの編集部の一員ですからね」
「はい」
庄司くんを追いたて、背筋を伸ばす。