ショコラ~愛することが出来ない女~
やがて見えてきた『ショコラ』は店内の明かりが消えて薄暗くなっている。
近づいて、厨房の明かりを確認して、窓を叩く。
最初は弱く、徐々に強く。
気付いて欲しい。
いや、気付かないで欲しい。
伝えなきゃ、
でも伝えたくない。
何をこんなに迷っているの。
私らしくも無い。
もう決めたんでしょう。
庄司くんと結婚する。
それを伝えて、隆二くんとの関係はきっぱり終わりにしなくちゃ。
「……康子さん?」
物音に気づいた彼が、窓辺に走りよってくる。
驚いた顔が笑みに変わり、すぐに扉が開かれる。
「久しぶりだね、入る?」
いつもと同じ調子で手招きする彼に、胸が軋む。
どうしてどれだけのブランクが空いても、隆二くんはこんな風に笑うんだろう。
それまでは救われた思いになっていた笑顔が、今日は辛い。